【短距離】肉離れが起きる原因と早期復帰のための治療・トレーニング【陸上競技】
こんばんは、KYです。
短距離選手に最も多いと言われている怪我の一つに、「肉離れ」があります。
肉ばなれとは、ダッシュなどの動作で筋肉の収縮時に急激な過伸張ストレスが加わり、そのため筋線維の損傷(いわゆる筋肉がはがれる)が起こる傷害の一般的総称です。医学的には筋断裂、筋膜断裂、筋損傷といい、主にスポーツ活動中に発症しやすく、スポーツ傷害で頻度が高い症状です。
出典:https://www.zamst.jp/tetsujin/thigh_calf_shin/muscle-strain/
短距離走では、大腿二頭筋(ハムストリングス)と呼ばれる、お尻の付け根と膝裏をつなぐ筋肉に対して特に起きやすいとされています。
今回は、私自身の肉離れの経験談から始まり、短距離選手に肉離れが起きやすい原因と、復帰までどのように過ごせばよいかを、実際の経験も元に解説していきたいと思います。
同じように肉離れで苦しんでいるアスリートの方の参考になれば幸いです。
肉離れに苦しんだ大学2年のシーズン
私自身、大学時代は肉離れに悩まされてきました。
大学二年の春、シーズンイン間近の合宿での練習時、ちょっとスピードを上げてシューズ流しをしようとしたところ、20mくらい走ったところでハムストリングスに「ピキッ」という感じがしました。
起こったときは痛みはそれほどなく、歩行も普通にできていましたが、伸ばすとちょっと痛みがありました。
それが人生で初めての「肉離れ」の経験でした。
自分の場合は軽度の肉離れだったのですが、アイシングや鍼治療に通い、一か月ほどして痛みも引いてきたので、「さあ、やるぞ」とスパイクを履いて加速走をしようとしたところ、今度は以前に怪我をした脚とは反対側のハムストリングスに「ピキッ」という嫌な感じがしました。
「あっ、...またやったわこれ...」
せっかく走れるようになったと思ったのに、またしても肉離れを起こしてしまったのです。
結局その年のシーズンは万全な状態で走ることは叶わず、SB(シーズンベスト)は確か11秒25くらいだったと思います。
モチベーションダダ下がりのまま、シーズンオフを迎えたのでした。
大学3年で10秒台を出せるようになるまでの経緯
結局、大学2年のシーズンは肉離れを克服することができず、最悪のシーズンオフを迎えてしまったわけですが、当時は本当に失意の底でした。
どれだけ大丈夫だろうと思って走ってみても、ちょっとスピードを上げたらまた肉離れを起こしてしまいます。
4~5回くらい、それを繰り返していたのではないでしょうか。
俗にいう、肉離れが「クセになっていた」状態でした。
大学2年の冬季は、今度こそ同じ過ちを犯すまいと、肉離れが起きる原因と対策について色々と調べ上げました。
大きく分けると、2つのことが原因であることが分かりました。
- フォームが悪い
- 筋力のアンバランス
詳しくは後で書きますが、この2つが原因で肉離れの連鎖に陥ってしまっていたことに気づきました。
そして私は、この2つの原因を取り除くべく、フォームの改善と筋力トレーニングに励みました。
すると、大学3年のシーズンで、再び10秒台で走ることができるようになったのです。
長く終わりがないように見えた怪我でしたが、何とか克服することができたのです。
ちなみに、それ以降は肉離れを始めとした大きな怪我は一切起こしていません。
以下では、肉離れ発生のメカニズムと、私が肉離れを克服するまでに行ったことを紹介していきます。
肉離れを起こしやすい人の特徴
肉離れしやすい人の走り方
肉離れを起こしやすい人の走り方の特徴として、以下の2つが考えられます。
- 振り出した脚を体の下に「引き戻す」ような動作をする
- ひざ下を大きく振り出して体の「前側」に接地する
①振り出した脚を体の下に「引き戻す」ような動作をする
1の場合について、これは以前に私が怪我をしたときの走り方と同じです。
本来は、スイングした脚をそのまま「真下に」落とし、そこに上半身を乗り込ませるというのが自然な走り方です。
それに対して、半ば「力づくで」速く走ろうとするあまり、急いで接地しようと脚を「振り下ろす」ような動作になると、ハムストリングスに大きな負担がかかります。
ハムストリングスがまだ縮もうとしているのに対し、無理やり力でそれを伸ばしに行ったら、急激な負荷がかかります。
その結果、筋肉が耐えきれず、損傷してしまうというわけです。
対策としては、
- 無理やりピッチを上げようとせず、自分にとって無理のない自然なリズムで走る
- 脚を体の下に引き戻すのではなく、振り出した脚に上半身を乗り込ませる意識をする
等が考えられます。
②ひざ下を大きく振り出して体の「前側」に接地する
次に2の「体の前方に接地をしてしまった場合」についてです。
体の前方で接地をすると、それに続いて上半身が乗り込んでくるため、当然接地時間は長くなります。
前方に接地した脚の力だけで上半身を前に持ってこなければならず、ハムストリングスへの負担も大きくなります。
その結果、負荷に耐えきれず肉離れを起こしてしまうと考えられます。
対策としては、
- ひざ下でストライドを稼ごうとせず、体の真下に接地して反発でストライドを得るように意識する
ことが考えられます。
筋力的な要因
肉離れを起こす原因は、フォームだけではありません。
筋肉のバランスがおかしかったり、柔軟性が極端に欠如していることでも、肉離れの発生リスクは高まります。
筋力面において、ハムストリングスと主動筋-拮抗筋の関係にある「大腿四頭筋」との理想的な筋力のバランス比は100:60であるとされています。
一般的なスプリンターでない人の場合、ハムストリングスの方が理想的な比率に比べると弱いということが多いため、スプリンターの場合は積極的にハムストリングスを鍛えることが、肉離れを防ぐためにも推奨されます。
肉離れを克服するまでの流れ
肉離れをしてしまったら...RICE処置
まず、肉離れを起こしてしまった際の応急処置「RICE処置」についてです。
肉離れを起こしたときにすぐに適切な処置を行えるかどうかが、今後の治りの早さにも関わってきますので、ぜひ知っておくと良いでしょう。
RICE処置とは?
RICE処置とは、Rest(安静)、Ice(アイシング)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの頭文字をとったものです。
具体的には以下のような処置を指します。
- Rest(安静)-スポーツ活動の停止
受傷直後から体内で痛めた部位の修復作業が始まります。しかし、患部を安静させずに運動を続けることでその作業の開始が遅れてしまいます。その遅れが結果的に完治を遅らせリハビリテーションに費やす時間を長引かせてしまいますので、受傷後は安静にすることが大切です。- Ice(アイシング)-患部の冷却
冷やすことで痛みを減少させることができ、また血管を収縮されることによって腫れや炎症をコントロールすることができます。- Compression(圧迫)-患部の圧迫
適度な圧迫を患部に与えることで腫れや炎症をコントロールすることができます。- Elevation(挙上)-患部の挙上
心臓より高い位置に挙上をすることで重力を利用し腫れや炎症をコントロールすることができます。
肉離れを起こした際は、まずは速やかに運動をやめ(Rest)、患部を氷のうなどで冷やしましょう(Ice)。
アイシングを始めて15~20分ほど(感覚がなくなってきたくらい)経ったら、患部をテーピングや専用の器具で圧迫(Compression)します。
毎回テーピングの巻き外しをするのは面倒なので、私は専用の器具を使っていました。
鍼治療が効果的
RICE処置を行った後は、できるだけ早めに治療を行いましょう。
私がおすすめするのは、「鍼治療」です。
鍼治療は、体の「ツボ」に極細の「鍼」を通すことで、中枢神経を刺激して鎮痛効果を発揮したり、筋肉に刺すことで血行を改善し、痛みの原因物質を洗い出すことができる治療方法です。
ラットを用いたある研究では、鍼治療によって筋肉の収縮力と痛みが早く回復することが分かっています。
私が以前お世話になった広島にある鍼灸院をご紹介します。
ここの院長の方は、一般の方からオリンピック選手まで、あらゆる方を治療してこられた、プロフェッショナルです。
それにも関わらず、治療費はリーズナブル(2回目以降で1,000円~)で、気軽に利用できるところもポイントです。
もし一刻も早く治したいと思うのであれば、腕の良い方に診てもらうのが一番ですので、ご参考になれば幸いです。
↓HP
↓院長Twitter
柔軟性と筋力を戻す
治療に通い、痛みが消えてきて、許可をいただけたら、少しずつトレーニングを再開しましょう。
怪我をしている間は、当然トレーニングを一切行っていないので、筋肉の柔軟性も筋力も以前より落ちています。
筋力のアンバランスが肉離れのリスクを高めることは先ほど書きましたが、そのような状態でいきなり走り始めると、また怪我をしてしまうのは目に見えています。
まずはストレッチと筋力トレーニングを実施したうえで、ドリルなどで負荷をかけていき、徐々にランニングに移行していきましょう。
↓チューブを使ったレッグカールのトレーニング例
↓ハムストリングスに負荷をかけるドリルの例
まとめ
いかがでしたでしょうか。
肉離れは再発しやすいと言われています。
それは、十分な筋力や柔軟性を取り戻したうえで、技術面においての改善まで行っていかなければならないからです。
症状も軽度のものから重度のものまで多岐にわたります。
私の場合は軽度のものを何回も繰り返すというパターンでした。
軽度のものでも、しっかり走れるようになるまでは一か月以上の期間が必要でした。
その間は、地道な補強の繰り返しで、正直モチベーションも下がりました。
そのようなときは、「ピンチはチャンス」ではないですが、怪我をしたということを前向きにとらえてみてはいかがでしょうか。
それは「普段できないことをやってみる」であったり、「自分の走りを見つめなおす」良い機会になります。
他人と比較してしまうと、どうしても焦ってしまいがちですが、焦って治そうとしてもあまり良いことはありません。
辛いときには周りの人に話を聴いてもらったり、モチベーションがどうしても上がらない時は、休んでしまってもよいと思います。
大事なのは、「競技へ復帰する」という気持ちを切らさないことです。
私自身も長い間肉離れには苦しめられましたが、諦めなければ必ず克服できます。
焦らずじっくりとやっていきましょう!
では、また次回。