【短距離】肉離れが起きる原因と早期復帰のための治療・トレーニング【陸上競技】
こんばんは、KYです。
短距離選手に最も多いと言われている怪我の一つに、「肉離れ」があります。
肉ばなれとは、ダッシュなどの動作で筋肉の収縮時に急激な過伸張ストレスが加わり、そのため筋線維の損傷(いわゆる筋肉がはがれる)が起こる傷害の一般的総称です。医学的には筋断裂、筋膜断裂、筋損傷といい、主にスポーツ活動中に発症しやすく、スポーツ傷害で頻度が高い症状です。
出典:https://www.zamst.jp/tetsujin/thigh_calf_shin/muscle-strain/
短距離走では、大腿二頭筋(ハムストリングス)と呼ばれる、お尻の付け根と膝裏をつなぐ筋肉に対して特に起きやすいとされています。
今回は、私自身の肉離れの経験談から始まり、短距離選手に肉離れが起きやすい原因と、復帰までどのように過ごせばよいかを、実際の経験も元に解説していきたいと思います。
同じように肉離れで苦しんでいるアスリートの方の参考になれば幸いです。
肉離れに苦しんだ大学2年のシーズン
私自身、大学時代は肉離れに悩まされてきました。
大学二年の春、シーズンイン間近の合宿での練習時、ちょっとスピードを上げてシューズ流しをしようとしたところ、20mくらい走ったところでハムストリングスに「ピキッ」という感じがしました。
起こったときは痛みはそれほどなく、歩行も普通にできていましたが、伸ばすとちょっと痛みがありました。
それが人生で初めての「肉離れ」の経験でした。
自分の場合は軽度の肉離れだったのですが、アイシングや鍼治療に通い、一か月ほどして痛みも引いてきたので、「さあ、やるぞ」とスパイクを履いて加速走をしようとしたところ、今度は以前に怪我をした脚とは反対側のハムストリングスに「ピキッ」という嫌な感じがしました。
「あっ、...またやったわこれ...」
せっかく走れるようになったと思ったのに、またしても肉離れを起こしてしまったのです。
結局その年のシーズンは万全な状態で走ることは叶わず、SB(シーズンベスト)は確か11秒25くらいだったと思います。
モチベーションダダ下がりのまま、シーズンオフを迎えたのでした。
大学3年で10秒台を出せるようになるまでの経緯
結局、大学2年のシーズンは肉離れを克服することができず、最悪のシーズンオフを迎えてしまったわけですが、当時は本当に失意の底でした。
どれだけ大丈夫だろうと思って走ってみても、ちょっとスピードを上げたらまた肉離れを起こしてしまいます。
4~5回くらい、それを繰り返していたのではないでしょうか。
俗にいう、肉離れが「クセになっていた」状態でした。
大学2年の冬季は、今度こそ同じ過ちを犯すまいと、肉離れが起きる原因と対策について色々と調べ上げました。
大きく分けると、2つのことが原因であることが分かりました。
- フォームが悪い
- 筋力のアンバランス
詳しくは後で書きますが、この2つが原因で肉離れの連鎖に陥ってしまっていたことに気づきました。
そして私は、この2つの原因を取り除くべく、フォームの改善と筋力トレーニングに励みました。
すると、大学3年のシーズンで、再び10秒台で走ることができるようになったのです。
長く終わりがないように見えた怪我でしたが、何とか克服することができたのです。
ちなみに、それ以降は肉離れを始めとした大きな怪我は一切起こしていません。
以下では、肉離れ発生のメカニズムと、私が肉離れを克服するまでに行ったことを紹介していきます。
肉離れを起こしやすい人の特徴
肉離れしやすい人の走り方
肉離れを起こしやすい人の走り方の特徴として、以下の2つが考えられます。
- 振り出した脚を体の下に「引き戻す」ような動作をする
- ひざ下を大きく振り出して体の「前側」に接地する
①振り出した脚を体の下に「引き戻す」ような動作をする
1の場合について、これは以前に私が怪我をしたときの走り方と同じです。
本来は、スイングした脚をそのまま「真下に」落とし、そこに上半身を乗り込ませるというのが自然な走り方です。
それに対して、半ば「力づくで」速く走ろうとするあまり、急いで接地しようと脚を「振り下ろす」ような動作になると、ハムストリングスに大きな負担がかかります。
ハムストリングスがまだ縮もうとしているのに対し、無理やり力でそれを伸ばしに行ったら、急激な負荷がかかります。
その結果、筋肉が耐えきれず、損傷してしまうというわけです。
対策としては、
- 無理やりピッチを上げようとせず、自分にとって無理のない自然なリズムで走る
- 脚を体の下に引き戻すのではなく、振り出した脚に上半身を乗り込ませる意識をする
等が考えられます。
②ひざ下を大きく振り出して体の「前側」に接地する
次に2の「体の前方に接地をしてしまった場合」についてです。
体の前方で接地をすると、それに続いて上半身が乗り込んでくるため、当然接地時間は長くなります。
前方に接地した脚の力だけで上半身を前に持ってこなければならず、ハムストリングスへの負担も大きくなります。
その結果、負荷に耐えきれず肉離れを起こしてしまうと考えられます。
対策としては、
- ひざ下でストライドを稼ごうとせず、体の真下に接地して反発でストライドを得るように意識する
ことが考えられます。
筋力的な要因
肉離れを起こす原因は、フォームだけではありません。
筋肉のバランスがおかしかったり、柔軟性が極端に欠如していることでも、肉離れの発生リスクは高まります。
筋力面において、ハムストリングスと主動筋-拮抗筋の関係にある「大腿四頭筋」との理想的な筋力のバランス比は100:60であるとされています。
一般的なスプリンターでない人の場合、ハムストリングスの方が理想的な比率に比べると弱いということが多いため、スプリンターの場合は積極的にハムストリングスを鍛えることが、肉離れを防ぐためにも推奨されます。
肉離れを克服するまでの流れ
肉離れをしてしまったら...RICE処置
まず、肉離れを起こしてしまった際の応急処置「RICE処置」についてです。
肉離れを起こしたときにすぐに適切な処置を行えるかどうかが、今後の治りの早さにも関わってきますので、ぜひ知っておくと良いでしょう。
RICE処置とは?
RICE処置とは、Rest(安静)、Ice(アイシング)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの頭文字をとったものです。
具体的には以下のような処置を指します。
- Rest(安静)-スポーツ活動の停止
受傷直後から体内で痛めた部位の修復作業が始まります。しかし、患部を安静させずに運動を続けることでその作業の開始が遅れてしまいます。その遅れが結果的に完治を遅らせリハビリテーションに費やす時間を長引かせてしまいますので、受傷後は安静にすることが大切です。- Ice(アイシング)-患部の冷却
冷やすことで痛みを減少させることができ、また血管を収縮されることによって腫れや炎症をコントロールすることができます。- Compression(圧迫)-患部の圧迫
適度な圧迫を患部に与えることで腫れや炎症をコントロールすることができます。- Elevation(挙上)-患部の挙上
心臓より高い位置に挙上をすることで重力を利用し腫れや炎症をコントロールすることができます。
肉離れを起こした際は、まずは速やかに運動をやめ(Rest)、患部を氷のうなどで冷やしましょう(Ice)。
アイシングを始めて15~20分ほど(感覚がなくなってきたくらい)経ったら、患部をテーピングや専用の器具で圧迫(Compression)します。
毎回テーピングの巻き外しをするのは面倒なので、私は専用の器具を使っていました。
鍼治療が効果的
RICE処置を行った後は、できるだけ早めに治療を行いましょう。
私がおすすめするのは、「鍼治療」です。
鍼治療は、体の「ツボ」に極細の「鍼」を通すことで、中枢神経を刺激して鎮痛効果を発揮したり、筋肉に刺すことで血行を改善し、痛みの原因物質を洗い出すことができる治療方法です。
ラットを用いたある研究では、鍼治療によって筋肉の収縮力と痛みが早く回復することが分かっています。
私が以前お世話になった広島にある鍼灸院をご紹介します。
ここの院長の方は、一般の方からオリンピック選手まで、あらゆる方を治療してこられた、プロフェッショナルです。
それにも関わらず、治療費はリーズナブル(2回目以降で1,000円~)で、気軽に利用できるところもポイントです。
もし一刻も早く治したいと思うのであれば、腕の良い方に診てもらうのが一番ですので、ご参考になれば幸いです。
↓HP
↓院長Twitter
柔軟性と筋力を戻す
治療に通い、痛みが消えてきて、許可をいただけたら、少しずつトレーニングを再開しましょう。
怪我をしている間は、当然トレーニングを一切行っていないので、筋肉の柔軟性も筋力も以前より落ちています。
筋力のアンバランスが肉離れのリスクを高めることは先ほど書きましたが、そのような状態でいきなり走り始めると、また怪我をしてしまうのは目に見えています。
まずはストレッチと筋力トレーニングを実施したうえで、ドリルなどで負荷をかけていき、徐々にランニングに移行していきましょう。
↓チューブを使ったレッグカールのトレーニング例
↓ハムストリングスに負荷をかけるドリルの例
まとめ
いかがでしたでしょうか。
肉離れは再発しやすいと言われています。
それは、十分な筋力や柔軟性を取り戻したうえで、技術面においての改善まで行っていかなければならないからです。
症状も軽度のものから重度のものまで多岐にわたります。
私の場合は軽度のものを何回も繰り返すというパターンでした。
軽度のものでも、しっかり走れるようになるまでは一か月以上の期間が必要でした。
その間は、地道な補強の繰り返しで、正直モチベーションも下がりました。
そのようなときは、「ピンチはチャンス」ではないですが、怪我をしたということを前向きにとらえてみてはいかがでしょうか。
それは「普段できないことをやってみる」であったり、「自分の走りを見つめなおす」良い機会になります。
他人と比較してしまうと、どうしても焦ってしまいがちですが、焦って治そうとしてもあまり良いことはありません。
辛いときには周りの人に話を聴いてもらったり、モチベーションがどうしても上がらない時は、休んでしまってもよいと思います。
大事なのは、「競技へ復帰する」という気持ちを切らさないことです。
私自身も長い間肉離れには苦しめられましたが、諦めなければ必ず克服できます。
焦らずじっくりとやっていきましょう!
では、また次回。
Amazon・楽天で買える!我が家のウサギのケージレイアウト紹介
こんばんは、KYです。
今回は、我が家のウサギこと「チャーミー」のお家のレイアウトをご紹介したいと思います!
「ウサギのケージのレイアウトに悩んでいます...」
という方に向けて書いていきます!
- ①【牧草入れ】外付け・内付けが可能!ワイドフィーダー
- ②ペットボトルが使える!給水ボトルキャップ
- ③ケージに取り付けて安定感抜群!かじり木コーン
- ④重量感があって安定感抜群!陶器式エサ入れ
- ⑤掘ってよし、休んでよし、隠れてよし!プレイマット
- ⑥かじって、ぶら下げて、転がして!かじり木ボール
- ⑦ケージのコーナーにぴったりで衛生的!コーナー式トイレ
- ⑧寒い季節はこれだけあればOK!リバーシブルヒーター
- まとめ
①【牧草入れ】外付け・内付けが可能!ワイドフィーダー
まず一つ目は牧草入れです。
現在使っているものは以下の商品です。
②ペットボトルが使える!給水ボトルキャップ
お次は、給水用のペットボトルキャップです。
③ケージに取り付けて安定感抜群!かじり木コーン
続いてウサギの歯の伸びすぎ防止やストレス発散に大切な「かじり木」のご紹介です。
かじり木にも色々と種類がありますが、最もリーズナブルなものがこちらではないでしょうか。
ケージのあらゆるところに取り付け可能なので、使い勝手が良く、ウサギがかじり木で遊んでいるときに地味に気になる、ケージとの接触音もないので、飼い主さんにとってもストレスフリーな商品です。
④重量感があって安定感抜群!陶器式エサ入れ
⑤掘ってよし、休んでよし、隠れてよし!プレイマット
続いてはウサギの遊び道具兼隠れ家になるプレイマットのご紹介です。
この商品は個人的に一番おすすめしたい、超コスパの良いシロモノです。
500円もしないのに、3つの使い道を備える優れものです。
-
掘ってウサギの本能を満たす、遊び道具として
-
上に乗って休む、休憩スペースとして
-
隠れ家として
うちのチャーミーは、掘るのがとにかく好きな子なので、ひたすら掘ってます(笑)。
かじり木など、他の遊び道具にあまり興味を示さない子でも、休憩スペースとしてや、隠れ家としても使えるので、かなりおすすめです。
⑥かじって、ぶら下げて、転がして!かじり木ボール
⑦ケージのコーナーにぴったりで衛生的!コーナー式トイレ
⑧寒い季節はこれだけあればOK!リバーシブルヒーター
まとめ
いかがでしたでしょうか。
広さも限られているので、ケージのレイアウトには、色々と迷いますよね。
そんな中、今回は「コスパ」に重点を置いて、うちのウサギのお家を紹介させていただきました!
シンプルでも、ウサギが過ごしやすく、退屈しない部屋づくりを心がけるとよいと思います!
では、また次回。
【短距離】強くなりたい人におすすめのTwitterアカウント5選【陸上競技】
こんにちは、KYです。
早いもので、もう3月ですね。
ブログを始めてからもうすぐ2か月が経とうとしています。
何とかここまで続けてこられたのも、ちらほらと見に来てくださる読者の方々と、脱社畜を目指す自分自身のハングリー精神の賜物だと自負しております(笑)
まだまだこれからもブログ頑張っていこうと思いますので、どうぞよろしくお願い致します!
さて、今日のテーマは、私と同じ陸上で短距離を専門としている方に向けて、有益な情報を提供してくれるTwitterのアカウントをいくつかご紹介したいと思います。
とその前に、Twitterを始めとしたSNSでは、様々な情報が手に入りますが、中には信憑性が疑わしいものもあったりします。
そんな中で真に有益な情報かどうかを見極めるのに重要になってくるのは、きちんとしたエビデンス(根拠)を元にした情報であるかどうかです。
有名な選手や指導者であるとしても、100%正しいことを言っているとは限りません。
その情報の根拠は何か?ということを常に気にしながら見ることが、誤った情報に踊らされないために大事なことです。
では、紹介していきます!
おすすめの陸上短距離Twitterアカウント
Sprint & Conditioning
フォロワー数:5,079(2019/03/02現在)
『陸上競技を「選手として取り組む」「指導者としてコーチングする」ための知識や思考を紹介します。』
※プロフィールより引用
★おすすめポイント
- 豊富で分かりやすいイラストを用いた解説
- 論文などのきちんとしたエビデンスを元にしているので信頼性◎
トレーニングについての情報だけでなく、バイオメカニクスや怪我予防等のコンディショニングについての情報も取り揃えられており、非常に充実した内容となっています。
無料メルマガの配布も行っているので、Twitterをやっていない人も是非登録してみてはいかがでしょうか?
shuhey!TKD(たけだ)
フォロワー数:14,035(2019/03/02現在)
『東洋大学 TeamAccel 陸上系YouTuber 登録者様30,000人【TKDPROJECT】』
※プロフィールより引用
★おすすめポイント
最近じわじわと伸びてきている陸上系YouTuberことTKDさんのアカウントです。
TKDさん自身も10秒台の自己ベストを持っていますが、陸上に関する知識は正直あまり...といったところです。
しかし、TKDさんの動画では競技力の高い選手、優秀なコーチの方々がちょくちょく出演しています。
TKDさんが視聴者目線で様々な疑問を投げかけ、それに対して先の方々が丁寧にそれに答えてくれるという構成で作られているため、いい感じに役割分担が出来ていると思います。
シューズやスパイクのレビュー動画もいくつかあるので、どうやって選べばよいか悩んでいる方にもおすすめです。
たまにしょうもない動画もアップされていますが、競技力に関係なく、幅広い人におすすめできるコンテンツとなっています。
河森直紀 Naoki Kawamori
フォロワー数:8,973(2019/03/02現在)
『アメリカとオーストラリアの大学院に留学して博士号を取得したストレングス&コンディショニングコーチ(トレーニング指導者)です。』
※プロフィールより引用
★おすすめポイント
「トレーニングは実際の競技動作に近づける必要はない、むしろ逆効果である」というのは最初に知ったときは中々の衝撃でした。
なぜトレーニングをするのか、どのようにトレーニングをするべきかについて、一からじっくり学ぶことが出来ます。
コーチやトレーナーを目指している方にもおすすめです!
ただ、リツイートが少々多いので、気になる方は「リツイートを表示しない」設定にすることをお勧めします。
九鬼靖太
フォロワー数:1,940(2019/03/02現在)
『京都教育大学→筑波大学大学院(修士)→和歌山県教員→筑波大学大学院(博士課程) 4年ぶりにブログ再開。 九鬼家のダッシュ!! 』
※プロフィールより引用
知っている方も多いと思いますが、あの九鬼巧さんのお兄さんです。
最近ブログを再開されたようで、しっかりとしたエビデンスに基づいた理論からトレーニングまで、スプリンターにとって有益な情報が数多く得られます。
陸上競技Lab
フォロワー数:746(2019年10月20日現在)
◯YouTube(毎週日曜19:00更新)やってます!☆チャンネル登録300人突破☆ 陸上競技について、スポーツ科学の視点・競技の経験から、競技力向上に役立つ情報発信をしていきます! ◯自己ベスト(スペア) 100m/10秒6台,200m/21秒3台
※プロフィールより引用
★おすすめポイント
- 研究論文に基づいた、科学的に信頼性の高い情報を提供
- 基本的な理論から具体的な練習方法まで丁寧に解説
最近YouTubeで活動を開始された「スペア」さんのTwitterアカウントです。
100m、200m共にかなりのハイレベルの自己ベストを持っておられ、チャンネル登録者もどんどん増えている模様です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
いずれも日々のトレーニングの本質について見直すきっかけを与えてくれたり、マンネリ化を防ぐのに大いに役立ってくれると思います。
Twitterをやっていない方は、是非これを機に始めてみてはいかがでしょうか?
(ついでに私の事もフォローしてくださると嬉しいです笑)
では、また次回。
【短距離】なぜ速い人はスタートで足を擦るのか?【陸上競技】
こんにちは、KYです。
今日は、短距離走における「要」であるSD(スタートダッシュ)について書いていきたいと思います!
今回は「なぜトップスプリンターの多くがスタートの際に足を擦るのか?」というテーマでお送りします。
スタートで足を擦るとは?
まず、「足を擦る」とはどのような動作を指すのでしょうか。
こちらの動画をご覧ください。
100m世界記録保持者のウサイン・ボルト選手のスタート映像です。
注目していただきたいのは、スタートから2歩目の脚を引き出す瞬間です。
地面すれすれを脚が通過しているのがよく分かります。
擦り足スタートの2つのメリット
擦り足スタートには、2つのメリットがあります。
- 最短距離で脚を引き出すことにより、無駄のないスタートが切れる
- 股関節の伸展動作を強調できるので、中盤以降の加速に繋がる
一つずつ説明していきます。
1. 最短距離で脚を引き出すことにより、無駄のないスタートが切れる
下の図を見てください。
膝を一回畳んでから脚を引き出し、また下におろすという動作と、膝の角度を変えずにそのまま前に脚を引き出すのとでは、どちらが早く次の動作に移れるかは一目瞭然です。
更に、上方向への力がより少なくて済むため、より効率的に、無駄な力を使わずに進むことが出来るというメリットもあります。
また、左図の極端な例ですが、スタートで脚を「巻く」動作を強調すると、体が浮いてしまい、最も地面に対して力を加えたいスタート局面で力を上手く加えられない、という致命的な状態に陥ってしまいます。
ブロッククリア時には後脚のかかとは臀部に引きつけないで、地面に沿うように引き出すことの重要性が述べられています。
引き出す脚の膝を曲げ、かかとを引きつけるようにすると、いわゆる「巻き込み動作」が起きることで、より上に跳ね上がるような動きを生んでしまいやすくなると考えられます。
そういった状態に陥ることを防ぐという意味でも、擦り足スタートは理にかなったスタートであると言えます。
2. 股関節の伸展動作を強調できるので、中盤以降の加速に繋がる
2つ目の理由については、ちょっと専門的な話になります。
先ほどの図でも分かるように、擦り足をすると、膝の角度がほとんど変わらずに、体の前に引き出されます。
これは、「膝関節の伸展*1」動作をほとんど使っていないということになります。
ここで、スプリント時の主な関節動作と、動員される筋肉の名称を書いておきます。
- 股関節伸展(大殿筋)
- 股関節屈曲(腸腰筋)
- 膝関節伸展(大腿四頭筋)
- 膝関節屈曲(ハムストリングス)
スタート時と中間疾走時ではこれらの比率が異なってきます。
スタート時は最も大きな力を発揮する股関節伸展を中心に、他の3つも同程度のバランスで動員されます。
中間疾走に移ってくると、徐々に膝関節伸展の力発揮は少なくなり、股関節屈曲や膝関節屈曲の配分が大きくなります。
通常、スタート時は膝関節の伸展が強調されがちですが、そこをあえて強調しないようにする、というのが擦り足スタートのミソです。
そもそも、スプリントのように全力で運動している最中に、これらの筋活動のパターンを意識的に変化させることは非常に困難であることが知られています。
つまり、あまりに膝関節の伸展を強調したスタート動作を行うと、中間疾走にもその影響が残り続けてしまい、スムーズな加速を行えないという弊害が出てくるのです。
膝関節の伸展を強調したスタートは、スタート直後は速いように感じられますが、「より高いトップスピードを導く」という観点からは、擦り足を活用した、股関節伸展を強調したスタートの方が合理的、という結論になります。
「スタートの飛び出しは速いけど、徐々に失速して追い抜かれてしまう」といった悩みを持っている人は、「トップスピードにつながるスタートができていない」のが原因かもしれません。
擦り足スタートを行っているトップスプリンターは、意識してかせずかは分かりませんが、このことを感覚的に理解して行っている可能性が高そうです。
デメリットは?
ここまで見ていただいた方は、以下のような疑問をお持ちになるのではないでしょうか。
「じゃあ、擦り足スタートにはメリットしかないの?」
いえ、決してそうではありません。
擦り足スタートにもデメリットはあります。
主に、下記のようなデメリットがあるようです。
- 低く飛び出し過ぎてしまう
- 股関節の過伸展が起きる
- 全身の連動性が失われる
- 擦ることでのブレーキ
これらは、100m自己ベスト10秒33を持つ、現役スプリンターの草野さんのツイートから引用したものです。
動きに関しては海外でも賛否が分かれており、私が理解できた範囲では
— 草野 誓也 (@KANAbeerSeiya) 2019年2月28日
メリット
・低く飛び出せる
・水平方向の力を増やせる
・足のリカバリーの軌道を短縮できる
デメリット
・低い飛び出しになってしまう
・股関節の過伸展が起きる
・全身の連動性が失われる
・擦ることでのブレーキ
1の「低く飛び出せる」ということについては、メリットでもあり、デメリットでもあるようです。
恐らく、筋力がない人が擦り足スタートをやろうとすると、低い飛び出しとなるがゆえに、バランスを上手くとることが出来ず、かえってブレーキ動作になってしまう、ということなのではないかと思います。
2の「股関節の過伸展」については、実は私もよく分かっていません。
前に草野さんにTwitterの質問箱で直接質問したことがありますが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」と返されただけでした(笑)。
3については、確かに普通は意識しないと擦り足という動きにはならないので、うまく全身をコントロールするには、技術と筋力の両方が必要になるでしょう。
4については、簡単な回避方法があります。
「擦らなければ」いいんです(笑)。
本当に脚を擦ってしまうと、単純に摩擦によるロスになってしまうことや、シューズが早くダメになってしまう、といったデメリットがあります。
ですので、おすすめするのは「擦らない程度に擦り足動作を行う」ということです。
いずれにしても、擦り足スタートを使いこなすには、技術力と筋力の両方が高いレベルで必要になってきます。
競技を始めて間もない人や、筋力が不十分な人は、まずは自分の出やすい、自然体なスタートを磨くことをおすすめします。
そして、擦り足スタートを取り入れようという方も、そこには必ずメリットとデメリットがあることを承知したうえで、「トータルとして自分にとって本当にメリットの方が大きいか」を考えるようにしてください。
おまけ:以下の動画で草野さんが擦り足スタートについて解説されていますので、さらに詳しく知りたい方は見ることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
*1:膝が曲がった状態から、伸ばされる
【陸上競技】1日4分でOKな超合理的トレーニングを教えます!【タバタプロトコル】
こんばんは、KYです。
突然ですが、あなたは何かスポーツを本格的にやっていますか?
もしあなたが社会人なら、日々の仕事で毎日は練習ができないことが多いでしょう。
学生の人でも、なるべく「効率良く日々の練習を行いたい」と思っているはずです。
今日は、そんな人でも短時間で、具体的に言えば1回たったの4分で高強度のトレーニング効果を得ることができる、画期的なトレーニングを紹介します。
何か特別な道具がなくても、今すぐに始められますので、ぜひご覧ください。
タバタプロトコルとは?
聞いたことがある人もいるかもしれませんね。
簡単に説明すると、
「20秒間何らかの運動を繰り返し行う + 10秒間休憩する」を6~7、可能であれば8セット連続して行うトレーニングのことです。
非常にシンプルですね。
しかし、実際にやってみると分かりますが、これが相当きついです。
行った後は、疲労困憊になること間違いなしです。
なぜ20秒 + 10秒なのか?
まず、人間には、無酸素系と有酸素系のエネルギー機構が存在します。
無酸素系は短時間で爆発的なパワーを生み出し、有酸素系は長時間エネルギー供給を持続できます。
あらゆる運動は、この無酸素系と有酸素系の割合が異なるだけで、どちらか一方のみということはあり得ません。
ということは、どちらも同時に鍛えてしまった方が効率的なのは明らかですよね?
話を戻して、この20秒 + 10秒というのは、無酸素系と有酸素系、両方のエネルギー供給系に同時に最大の負荷をかけることができる組み合わせなのです。
つまり、これ以上なく合理的なトレーニング方法と言えるでしょう。
これなら、時間がない人でも、短時間で高強度のトレーニングを行うことができるというわけです。
ただし、タバタプロトコル自体は4分弱で終わるといっても、ウォーミングアップとクーリングダウンはきちんと各10分ずつくらいは行うようにしましょう。
20秒 + 10秒を測る方法ですが、スマートフォンをお持ちであれば、「タバタ」で検索すればアプリがいくつか出てくるので、それを使うとよいでしょう。
実際のトレーニングメニューについては、あなたが知っているものでもよいですし、本やウェブサイトに色々と載っているので、そちらをチェックしてみてください。
パワーマックスって何?
色々なメニューで試してみるとよいでしょう。
次に紹介するのは、パワーマックスと呼ばれるマシーンです。
↓これです。
エアロバイクと類似していますが、パワーマックスの特徴は、かなりの高回転にも耐えられることです。
負荷を自由に設定でき、タバタ的に行うことも可能です。
また、「無酸素パワーテスト」では、トレーニング後に数値化して結果を出してくれるので、トレーニングの指標になり、役立ちます。
一般のジムにはあまり置いていないと思いますが、見かけたときは一度やってみてください。
もしくは、値段は高いですが、自分で買うのも一つの手です。
私もマイ「パワーマックス」が欲しいと思っているうちの一人です(笑)。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
短時間で、合理的に鍛えるなら、タバタプロトコルは最高のトレーニング方法です。
一方で、かなり高強度の運動なので、普段から運動をしている人でなければ、まずは少ないセット数から初めて、徐々に数をこなせるようにしていきましょう。
ぜひ普段の練習に取り入れてみてください!
では、また次回。
【短距離】スプリンターが上半身を鍛えるべき2つの理由【陸上競技】
こんばんは、KYです。
今回は、短距離選手が上半身を鍛えるべき理由についてお話します。
結論から言うと、大きく次の2つの理由が挙げられます。
- より強いキック動作を行うために必要
- 地面からの反発を最大限に活かすために必要
これらについて、 以下で詳しく見ていきます。
スプリンターにとっての上半身トレーニングの意味
腕振りの役割
私たちは走るときに必ず前に振り出した脚と反対側の腕を振り出しますよね?
これは、片方の脚が振り出されるときに発生する体が回転しようとする力を、反対の回転方向に腕を振ることによって、相殺(打ち消す)するための動作です。
真っすぐにバランスよく走るためには、この回転しようとする力は邪魔ですよね。
腕振りは、効率よく力を前方向に発揮するために重要な役割を果たしています。
下半身の筋肉量は、体全体の70%に及ぶとされています。
下半身はそれだけ質量(筋肉量)が大きいため、必然的に、振り出したときの回転力も大きくなります。
この大きな回転力に対抗するために、上半身の強化が必要となってきます。
また、トレーニングによって、上半身の質量が上がること自体が、上半身を振られにくくし、その結果としてより強い下半身のキック動作を生み出すのに貢献します。
体幹も大事
大事なのは腕振りだけではありません。
腹筋や背筋、いわゆる「体幹」と呼ばれる部位の強化も、速く走るうえでは欠かせません。
私たちの体、とりわけ背骨は「S字」の形をしており、人体に加わる衝撃をうまく逃がすための構造になっています。
しかし一方で、地面からの力を効率よく全身に伝えるためには、接地のたびに緩衝していては、十分に前への推進力を得ることができません。
本来の体の仕組みと逆のことをしなければならないわけです。
そこで重要になってくるのが、腹筋や背筋等の「体幹」です。
それらを鍛えることで、地面からの衝撃に耐えることができるようになり、地面からもらう力を逃がさずに使うことができるようになります。
↓参考動画
陸上部の走りと他部活の走りの違い。反発のもらい方徹底分析!!
まとめ
スプリンターにとって、上半身がいかに重要か分かっていただけたでしょうか。
上半身を鍛えることで、下半身の振り出しによる力と、地面からもらう力を最大限に活かすことができるようになります。
スプリンターの皆さんは、上半身もしっかりと鍛えるようにしましょう。
では、また次回。